IAUメールマガジン 2006年6月5日 発行

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▼歴史に学ぶ経営の教訓
 第17回 歴史ifの教訓:天皇制に学ぶブランド創設(後半)
▼税務戦略
 第16回 節税対策
▼全員経営者時代のやさしい管理会計講座
 第17回 適正在庫の制御

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 歴史に学ぶ経営の教訓 第17回
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■歴史ifの教訓:天皇制に学ぶブランド創設(後半)


ルイ・ヴィトンの場合は、材質も神話になっている。
若い顧客層は革と思い、高年齢層は不思議なビニールと思っている。主体のモノグラ
ムはキャンバス地、つまり布である。

「材質にいたるまで神話になっているとすれば、物凄い神話が重なっているというこ
と。その神話がやはり売れる理由。だから神話作りの成功かな?
(堺屋太一、どうして売れるルイ・ヴィトンより)」

パワーユーザの存在は、どちらのケースも顕著である。
天皇制は、代々の覇者、実力者が前衛層の顧客であった。覇者が天皇制を利用したケ
ースが多いので、顧客といえるかどうかは別として、一番熱心なファンであったこと
は確かである。

ルイ・ヴィトンも初期の段階から、王族、貴族、富豪、各界の有名人などが前衛層の
顧客となった。
この人達の果たす役割は大きい。自身が購買層として売上に貢献するだけではなく、
広告宣伝効果、波及効果も大きい。

ボランタリーエコノミーの側面では、天皇制の場合、中核層となる武士層、中間庶民
層が天皇制にあこがれ、自分も都に上って名前だけでもなんらかの官職に付きたいと
願った。
あの平将門ですら、都に上って検非違使の尉、つまり警察署長程度になれれば幸せと
上京した。
一寸法師も都での任官を願った出世物語である。

ルイ・ヴィトンの購買の主力である中核層は、文化としてのルイ・ヴィトン、価値観
の共有としてのルイ・ヴィトンに憧れ、貴族、富豪の末端のようなコミュニティを形
成し、ボランタリー(自発的)に新作などの情報を発信していく。
これは、「教えて、教えて」というフラジャイルを情報伝達の基本としているので、
伝達はより早くより確実であり、浸透レベルが高い。

不易流行の側面では、天皇制の場合、万世一系は変わらないが、その時々の覇者、実
力者の政権に合わせて外面を変えて制度を維持してきた。
ルイ・ヴィトンの場合も、デザイン価値の根源であるモノグラムは普遍であるが、時
代の流行に合わせた新作をその時代のトップデザイナーが生み出している。

「革新とは、伝統を進化させること。
伝統と革新、ルイ・ヴィトンの絶対的な首位性をひもとく鍵はここにある。
(中村慎太郎 どうして売れるルイ・ヴィトンより)」




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 税務戦略 第16回
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■節税対策


手前勝手なクイズです。
「一年の中で会計事務所が一番忙しい時期はいつでしょうか?」
一般的な正解は5月です。3月決算5月申告が多いからです。超繁忙期が終わり、少し
ほっとしています。

決算で一番苦労するのは、税金を調整したいという要望です。実際にこの5月申告で
行った事例を下記に示します。

前払家賃の取り消し:
家賃は通常次月分を当月払いますので、本来は前払い計上すべきですが、1年以内の
前払費用は支払時に損金処理が可能ですので、前払家賃の計上は省略可能です。
引き継いだばかりの会社が前期に前払家賃を計上していれば、その分当期で節税でき
ます。来期からはその節税効果はありません。

未払給与の計上:
従業員給与が20日締めの25日払いであれば、21日から末日までの分を損金処理できま
す。

事業保険積立金の見直し:
生命保険の会計処理は複雑で、過去に損金処理できるものを資産計上してあるケース
があります。
生命保険会社から証明書を入手して照合すると会社の資産計上額が過大のケースがあ
ります。
その差額を一括損金処理できます。
ただし、逆の場合もありますので、あしからず。

在庫の評価減:
季節商品で売れ残ったものなどについては、評価減が可能です。
合理的基準を継続するという注意は必要です。

その他に、不良資産の整理、民事再生の債務免除益の課税軽減、試験研究費の税額控
除、教育訓練費の税額控除、IT減税などをこの5月申告で行いました。

なんだ、そんな程度は実行しているよと言われる経営者の方が多いと思われますが、
「経営に王道なし」、「節税にも王道なし」で、恩典としてある税額控除等は活用し
て企業の体質を強化することが大切です。

社長の個人消費、不要な物品等の購入、無駄な社員旅行、飲食等は、かえって企業体
力を弱めます。
このような無駄な出費を行うくらいなら税金を払った方が経営にプラスです。
なぜなら、60%は手元に残るからです。
この60%をこつこつと積み立てるのが税務戦略の王道かもしれません。




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 全員経営者時代のやさしい管理会計講座 第17回
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■適正在庫の制御


在庫戦略の目的は、適正在庫の実現である。
適正在庫は、以下の条件を満たすことが必要である。

(1)	品質を落とさずに相対的に最も有利な単価で購入すること。
(2) 必要なタイミングに必要な量が確保されていること。
(3)	現に、製造、販売に使用されている物品だけで構成されていること。

(1)の条件をクリアするためには、購買価格戦略が必要である。
従来の仕入ルートにしばられずに、あらゆる仕入ルートの価格を継続的に調査し、よ
り安いルートからの購入を行うことが肝心であるが、質を落とさないためにはサンプ
ルの吟味が必要不可欠である。

インターネットの発達によって世界中から購買に関する情報が入手できるようになっ
た。インターネットのサイト(ホームページ)に電子入札の画面を設けることも容易で
ある。
購入サイドで、必要な物品等の仕様書開示しておけば、広範なベンダーから見積りが
入る。理論的にはその中から最も安価な見積りを採用すれば良いのだが、現実にはあ
らかじめ複数のベンダーを登録しておき、仕入れが必要なときに電子見積りの依頼を
電子メールで送信し、電子見積りを受ける方式となろう。

(2)の条件をクリアするための戦略としては、発注点管理の自動化が代表的である。
仕入品目毎に発注点を定め、それに到達した時点で発注が行われる仕組みである。
発注点は以下の式で計算される。

発注点 = 
 現在の在庫数量
 − 1日当たりの平均出庫数量 × 仕入に必要な日数 + クッション数量

クッション数量は、在庫切れによって生産や販売に支障をきたさないように保管する
余裕在庫であるが、この数量の決定にはたぶんに主観が入り、過剰在庫の原因となる
ケースが多い。

発注点に到達したときの発注数量も検討を要する。
1か月分を発注するのか、1週間分を発注するのかでは発注数量が異なる。
国内仕入れでは、発注から納品までのリードタイムが短くなっているので、翌日使用
分を本日に注文するケースもある。

輸入仕入れ場合は、通関にも時間がかかるので、1回の発注数量に工夫を要する。
生産や販売に間に合わないと航空貨物で仕入れることになり、かえってコスト高にな
ることもある。