IAUメールマガジン 2006年1月5日 発行

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▼歴史に学ぶ経営の教訓
 第12回 物語の必要性
▼税務戦略
 第11回 平成18年度税制改正速報
▼全員経営者時代のやさしい管理会計講座
 第12回 製造段階における原価改善
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 歴史に学ぶ経営の教訓 第12回
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■物語の必要性


一般の企業はどのような戦略が実際問題として実行可能なのか。
持統天皇の情報編集戦略に学ぶとすれば、単純にストーレートに企業名を連呼するだ
けの広告ではなく、継続的な物語の中に企業イメージや、商品イメージを定着させな
いと「不易流行」は達成できない。
日本経済新聞の「続ける日経」や、日立製作所の「インスパイア ザ ネクスト」の
CMはこの効果を狙ったものであろうが、物語性が乏しい。

映画を制作して配信することは通常の企業にとっては困難である。そこで、インター
ネットを活用する。
インターネットでの動画配信は今後のブランド戦略にとって重要である。この中にい
かに物語性を持たせるかがポイントとなる。

ブランドは本人がいくら「素晴らしい」と百回連呼しても、他人の評判には負ける。
そこで、他人の評判を意図的に作成することが必要になる。本人が言うのではなく、
他人がそれも無名の多くの顧客が「良い」という自然発生的なレピュテーションが必
要である。
レピュテーションを意図的に創設することが情報編集戦略の要である。
レピュテーション(Reputation)は経営理論的には「取引事実の蓄積によってある評
価が確立するという意味」である。
一般的に、「さすが…だ」とか「……のことだから…だろう」いう評判がレピュテー
ションである。 

ブランドは創設するだけでなく、守るのも重要である。長い企業活動の間には、不祥
事や事故が発生する時がある。そのような時は、従来の広告宣伝を即刻中止し、お詫
びの宣伝に変えるか、まったく宣伝しないで静かに喪に服すべきである。
不祥事を起こしながら従来どおりに企業イメージ宣伝を行っているとマイナスのブラ
ンドが形成されて行く。




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 税務戦略 第11回
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■平成18年度税制改正速報


平成17年12月15日に、自民党の平成18年度税制改正大綱が公表された。
過去の経緯から、この大綱がほぼ平成18年度の税制改正となる見込みである。その主
の内容、特に中小企業経営に影響を及ぼしそうな項目を概観する。
なお、詳細な適用要件等については省略している。

[研究開発節税]

中小企業者の場合、前年の試験研究費と比較して増加した額の17%、あるいは試験研
究費の総額の12%の税額控除が受けられる。将来の収益力確保のために、中小企業に
おいても産学協同の研究開発を検討するタイミングとなろう。


[情報セキュリティ節税]

情報セキュリティ設備投資に対して、取得価額の50%の特別償却か10%の税額控除が認
められる。中小事業者の場合は、リース費用の総額の60%相当額について10%相当額の
税額控除が認められる。


[同族会社の留保金課税の改正]

自己資本比率50%以下の中小法人への不適用要件が廃止される。逆に同族会社の要件
を3株主グループから1株主グループに緩和し、課税対象となる留保金額をアップする。


[役員給与の損金算入のあり方の見直し]

役員報酬(給与)は、毎月定額支給でなくても損金算入が認められる。業績連動型、
つまり役員賞与についても原則は損金不算入であるが、透明性、適正性の要件を満た
せば損金算入が可能となる。
逆に、実質的な一人会社のオーナーへの役員報酬は、一部損金算入が制限される。


[交際費課税の緩和]

中小企業の場合、1人当たり5,000円以下の飲食費が損金算入となる。


[欠損金を使った節税の制限]

平成18年4月1日以後に買収された欠損法人で、買収後5年以内に欠損法人が従前の事
業を廃止し、その規模を大幅に超える事業を開始した等、一定の事実が生じた場合に
は、その欠損金の損金算入が制限される。また、3年以内に生ずる資産譲渡損失も損
金不算入となる。これは、赤字会社を使った節税の規制である。


[会社法の制定にかかる株式取引]

株主が受けた株式の無償割当て及び新株予約権の無償割当てについては、原則として
課税なし。


[相続税関係の改正]

物納不適格財産を法令に限定列挙することにより、物納許可基準が明確化される。非
上場株式についても要件を満たせば物納の対象となる。


住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例については、適用期限が平成19年12
月末まで2年間延長される。
なお、住宅資金の550万円までの非課税贈与はなくなった。




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 全員経営者時代のやさしい管理会計講座 第12回
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■製造段階における原価改善


生産者が市場価格を決定できる環境下では、製品の製造原価に一定の利益を加えて金
額を売価として設定できる。

しかし、顧客ニーズの多様化、それに伴う多品種少量生産化、商品のライフサイクル
の短縮、商品のトータル評価の浸透(商品の本質的な機能だけでなく、色や名前など
総合的に消費者が評価すること)、競合商品の乱立などにより市場環境が複雑になっ
てくると、価格は生産者の希望とは無関係に決定される。

売上高を維持するために市場価格に自社の販売価格を合わせるので、時には製造原価
を販売価格が下回るような現象もでる。
いわゆる原価割れである。

市場価格に合わせた販売価格の設定で売上高を維持するとともに、製造原価の引き下
げによって一定の粗利益を確保しなければならない。
積極的に原価構造を見直して原価を引き下げるのが原価戦略である。

従来の原価戦略の中心は、標準原価であった。
あらかじめ「あるべき金額」を定めて、それを維持するようにコントロールし、製造
ラインを見直して標準原価そのものを引き下げる戦略である。
この段階で使われる手法としては、以下のようなものがある。

・QC活動による改善
・IE(Industrial Engineering)を使った分析と改善