IAUメールマガジン 2002年7月1日 発行

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●経営語録
■借入の際は、その『コスト』を検討すること。
■平成16年4月からの早期適用も。固定資産の減損会計。
■連鎖倒産の被害を未然に防ぐ取引信用保険。
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●経営語録
世の中に何が卑しいと云って、人の為人の為といいつつ、
自分の欲を掻く位卑しいことはあるまい。

・作者
伊藤左千夫 明治時代の文芸家

・ビジネスへの応用
これは耳に痛い。
お客様のため、仕入先のため、従業員のためと喧伝しながら実態は私利私欲の経営に
過ぎないケースも多い。


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■借入の際は、その『コスト』を検討すること。
[D60]

企業にとって資金調達は欠かせない要素です。多くは銀行からの融資に頼るのですが
、ここで考えなければならないのが金利。最近は低利になってはいますが、単純にそ
れだけで判断するのは危険です。『借入のコスト』を検討する必要があります。
そこで大切なことが実効金利というもの。これは、借入・預金を含めた総合的な観点
から計算した金利。計算式は以下のようになっています。

(借入金利息の合計−預金利息の合計)
--------------------------------- ×100 =実効金利(%)
(借入金額の合計−預金額の合計)

たとえば、年利0.2%の定期預金が2,000万円あり、5,000万円を年利2%の金利で借入
たとします。上記の計算式にあてはめてみると・・・

借入金利息100万円 − 預金利息4万円
------------------------------------ ×100 =3.2
 5,000万円 − 2,000万円

つまり実効金利は3.2%と、表面に見える金利(2%)より1.2%も高いことになりま
す。そこで、実効金利をできるだけ下げることを考えなくてはなりません。その方法
のひとつが預金額を減らすこと。このケースで預金を1,000万円に減らすと・・・

借入金利息100万円 − 預金利息2万円
------------------------------------ ×100 =2.45
 5,000万円 − 1,000万円

実効金利は0.75%も減少させることができます。預金額を減らすことが実効金利を下
げる効果がああることがわかります。また、これまでの取引実績などを基に、借入利
率そのものを下げる交渉も選択肢にあるでしょう。このとき、入金振込先、給与振込
などの決済をすべて交渉先の銀行に指定するなどといった条件を話してみるといい結
果が得られるかも知れません。


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■平成16年4月からの早期適用も。固定資産の減損会計。
[E20]

『減損会計』とは、減損状態にある固定資産を評価減することです。固定資産の減損
とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、評価
減にあたる減損処理とは、そのような場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映さ
せる帳簿評価額を減額する会計処理です。対象は固定資産(自社使用、棚卸資産を除
く貸用土地等を含む)に限られています。固定資産が減損処理の対象となるかについ
ては、その資産が将来的に生み出すであろうお金の総額が、その事業年度の対象固定
資産の帳簿価格を確実に下回ることが必要とされています。
たとえば、簿価10億円の賃貸ビルに対し、将来の家賃収入の総額が合計でも7億円に
しかならないとすれば、10億円の簿価を7億円に改訂し、差額3億円を企業の損失とし
ます。この減損会計の適用について平成17年4月からの適用を原則ですが、16年4月か
らの早期適用も考慮されています。税務上の取り扱いは不明ですが、減損時点では損
金とならない可能性が大です。税効果会計で調整することになりそうです。


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■連鎖倒産の被害を未然に防ぐ取引信用保険。
[H60]

いまや少なくない大型しかも突然の倒産。会社の存続に大きく影響する問題に未然に
対処する方法として『取引信用保険』に加入する会社が増えています。これは、取引
先企業が破綻した場合に、信用度に応じて保険金が支払われるものです。財務内容な
ど取引先企業の審査が行われ、その信用度に応じて保証限度額を設定。保険金は保証
限度額の範囲内で支払われます。売掛金などの求償権は保険会社に移転するので回収
の手間も時間も不要になります。見逃せないのは、保証限度額が、売掛限度額の参考
になる与信情報として活用できることです。与信業務に時間も人もかけられない企業
にとっては、商取引の貴重な情報になることは間違いありません。また、取引信用保
険の加入は取引先にはわからないようになっている点も、安心して加入できる要素だ
とえいます。倒産防止掛金だけでは不十分な時代です。リスクマネジメントの強化が
必要ですが、コスト面と比較すると採算が一概に加入できません。年商15億円の会社
で年間に600万円程度かかります。事前の予防がなにより大切です。